《腋臭症いわゆるワキガの治療》
※腋臭症治療は、健康保険の適応になります。
ワキガ(腋臭症)の治療では、外用剤(制汗剤・消臭剤・殺菌剤など)の塗布による保存的治療から、内視鏡的交感神経離断術などの外科的な治療まで、様々な治療法があります。当クリニックでは基本的に、皮弁反転剪除法による汗腺のみを選択的に切除する方法を行っています。最近、医療機器の進歩によりレーザーメス、高周波メスなどの登場により、比較的簡単に低侵襲で切開することが可能になりました。
【汗腺の種類】ヒトの体には、皮脂腺、エクリン汗腺、アポクリン汗腺の3種類の汗腺が存在します。ワキガの発生に関与している汗腺はアポクリン汗腺とされ、特にこのアポクリン汗腺は、ワキに多く存在しています。皮脂腺は、脂を分泌して皮膚の潤いを保たせ、外的刺激から皮膚を防御する役目を担っています。エクリン汗腺は、水分のみを分泌し、体温調節に関与しています。さらにアポクリン汗腺は水分とタンパク質や脂質を分泌します。
【ワキガの原因】何故、腋から独特な異臭を放つのか、未だ、明確な原因は分かっていませんが、家族内発症をする場合が多く認められるため、遺伝的要因が関与していると考えられています。本来、アポクリン汗腺から分泌される汗には、無臭ですが、汗の成分中にはたんぱく質や脂質が含ませており、これらを皮膚状在菌が化学分解したものが、異臭の原因になると考えられています(低級脂肪酸の発生)。また、多汗症は、エクリン汗腺が関与し、汗の生産増加が原因とされています。わきの多汗症では、エクリン汗腺とアポクリン汗腺が混在しているので、ワキガとワキの多汗症を厳密に区別することは大変困難です。
【治療方法】ワキガの外科的治療には、切除法、皮弁反転剪除法、掻爬・吸引法、電気凝固法など様々な方法が用いられています。いずれの方法も優れていますが、確実にアポクリン汗腺の除去を望む場合は、
皮弁反転剪除法が最も優れていると考えています。この反転剪除法は、ワキの縦ジワに沿って3〜4cm程度切開を行い、原因組織であるアポクリン汗腺やエクリン汗腺を切除します。この方法の利点として、小さな切開で手術が行える。直接術者が汗腺を確認しながら除去するので取り残しがない。手術時間は約1時間から一時間半程度で入院の必要はなく、日帰りでの手術が可能など、非常に侵襲の少ない治療です。手術後は、腕を激しく動かしたりせず、可能な限り安静を保つようにします(1週間程度)。抜糸は術後2週間から20日ごろに行います。
非常に侵襲の少ない治療といっても、ある程度の合併症は生じることがあります。
| 術直後皮下血腫 | 術後、出血し皮下に血液が貯留することがあります。安静を保つことによって、皮下血腫は回避されます。もし仮に血腫を生じた場合、早期に、適切な処置を行えば、将来的には問題はありません。 |
| 腋毛の脱落 | 汗腺の除去と同時に腋毛の毛根も切除されますので、ワキに生えている毛が脱落してしまいます。時間の経過と共に多少再生してきますが、ほとんど生えてこないでしょう。 |
| 感染症の発生 | 大変稀なケースではありますが、細菌感染を生じることがあります。予防的に抗生剤、消炎鎮痛剤の内服で感染症対策をおこないます。 |
| キズ痕残存 | 外科的な処置を受けた部分のキズ痕は残ります。個人差はありますが、抜糸後は発赤し硬くなりますが、3ヶ月をピークに徐々に色調は薄くなり、しこり状に硬くなった皮膚組織も次第に柔らかさが回復してきます。 |
| 色素沈着 | 術後から3か月から6ヶ月間、個人差はありますが、長い場合1年ほどで色素沈着は消失し、ほぼ改善します。 |

ワキガの治療を健康保険で治療すると、キズ痕が汚くなるとか、臭いが再発するなど、様々な情報が氾濫していますが、保険診療で行った結果と自由診療で行った結果のいずれの治療ともに、全く術後の経過に変わりはありません。要するに手術を行う医師の経験や技量によって、術後の結果が変わるだけなのです。経験の浅い医師や専門外の医師が治療を行えば、マニュアルに沿って手術をしても、良い結果は得られないかもしれません。ワキガ治療に関わらず、病気の治療というものは、患者さんがきちんと納得した上で医師に治療依頼をし、依頼された医師は、これまで培ってきた知識、経験、技量を治療に生かして、全力で取り組む姿勢が大切だと思っています。
【治療費】 健康保険診療になります。
初診料1.580円、検査料5.000円、処置料105.000円(消費税込み)
何度もワキガの治療を受けたのですが、全くかわりません。という訴えで来院される患者さんがいらっしゃいますが、このように精神的に異臭が気になる患者さんの場合は何度治療しても改善はしません。
多汗症もしくは発汗過多症は、精神的苦痛、社会的に支障をきたすため、治療が必要とされてきましたが、これまで有効な治療法はありませんでした。ワキの多汗症に関しては、外科的に汗腺を除去する方法や発汗をつかさどる神経を切断する方法で発汗を減少させることは出来ますが、術後のキズ痕の問題、代償性発汗などを生じるため、患者さんにとっては、希望されない場合もあります。最近、A型ボツリヌス外毒素(ボトックス)の局所注入療法が行われるようになりました。
【治療】ボトックス治療にかかる時間は、5分から10分程度の短時間で終了します。ワキの皮下に直接薬剤を数箇所に分けて注入しますので、痛みはあります。当院では、この痛みを軽減させるために、表面麻酔薬を塗布してから一時間後にボトックスを注入します。治療後は、特別生活の制限もなく、当日から入浴も可能です。

このボトックス治療は永久に発汗がなくなる治療ではありません。しかしながら、治療後約72時間から発汗が抑制されはじめ、1週間程度でほとんどの場合、効果が現われます。効果の持続期間は、個人差がありますが、約3ヶ月から6ヶ月は効果が持続します。
【適応外疾患】ボトックス(A型ボツリヌス外毒素)は、ワキや手掌の多汗症に対する新しい有効な治療法で、発汗減少を目的とした制汗剤などの局所外用剤などに変わる安全な治療法です。しかしながら、適応のない場合があります。肥満、閉経、抗うつ剤などの薬物使用者や低血糖症、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫などの内分泌疾患のような、二次性多汗症の場合は、適応はありません。
ボトックス治療は、保険診療の適応にはなりません。しかし、からだにキズをつけたくない方や、手術治療を望まない方、さらにこれまで他の治療で効果のなかった患者さんには、非常に安全で簡便有効な治療法と考えています。